19/2/20「鉄」
19/02/20 20:33 
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「鉄」

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今年も熊本城マラソンランナーの皆さんの雄姿を
拝見させていただきました。
それぞれの思いを胸に参加を決意し、
練習を積まれて本番に臨まれたことでしょう。

私は最終地点近くにいましたが、
皆さん、
疲労が積み重なった足を前に前に進めていらっしゃいました。
どなたの表情も輝いて見えました。

知人も数名、
中にはおこさまの付き添いで当院に来院される
お父様のお姿もありました。
また、
日頃は疎遠になっている方のお元気な姿もあって、
生きる勇気をいただきました。

さて、
人の血液中の赤血球はヘモグロビンを含んでいますが、
このヘモグロビンの中に鉄が存在し、
この鉄に酸素が結合して体中の細胞に酸素が運搬され、
生きていくためのエネルギ―が産生されます。

強度の高い運動を続けていると、
筋肉内での鉄需要の増加、
発汗による鉄の喪失、
足底部にかかる強い衝撃による赤血球の破壊、
などの理由から貧血を起こしやすくなります。

そのため、
日々の食事からしっかりと鉄を摂る必要があります。
食物中の鉄イオンの多くはFe3+で存在していますが、
鉄イオンが十二指腸の膜から吸収されるのはFe2+のみです。
つまり口から胃を通って十二指腸に運ばれたFe3+は、
ビタミンCから電子をもらってFe2+に変換されて、
十二指腸の膜を通過して血液の中に移動します。

このことはこれまで分かっていましたが、
昨年8月、
兵庫県立大学などの研究グループは、
鉄が吸収される詳細なメカニズムを解明しました。

簡単に説明しますと、
十二指腸の膜に存在する蛋白質(Dcytb)にビタミンCが結合します。
そして十二指腸に運ばれてきたFe3+がこの膜蛋白質に結合して、
ビタミンCから電子をもらってFe2+に変換され、
この膜蛋白質から離れて、
十二指腸の膜にあるFe2+を通過させるトンネル
(金属イオンのトランスポーター)
を通過して血液の中に移動します。

この研究から、
ビタミンCだけではなく、
食物中に含まれる有機酸(クエン酸やリンゴ酸など)も
Fe3+とともにDcytbに結合して、
Fe3+がFe2+に変換される反応を促進することが判明しました。

鉄分を摂る際には、
鉄分の多い食物だけではなく、
ビタミンC、
クエン酸やリンゴ酸などが含まれる食物も一緒に食べましょう。
これらの食品については、
ネットなどで御検索ください。