12/8/29「ある講演から」
12/08/29 11:50 
▼タイトル
「ある講演から」

▼本文


先日、
全盲のピアニスト
辻井伸行氏のお母様のお話を
聴きしました。
辻井氏は
ある国際コンクールで
日本人で初めて優勝し、
現在世界中で活躍している
新進気鋭のピアニストです。

我が子が全盲と知った時、
絶望を感じたそうです。
その当時は今ほど情報が少なく、
ある視覚障害をもつ方の本を読んで
その著者に手紙を送ったら、
思いがけず、
その方から遊びにいらっしゃいと
お返事をいただいたそうです。

その方は盲導犬と一緒に
人生をいきいきと
楽しんでいらっしゃったそうです。
そして、
「普通に育てたらいいのよ。
あなたが感じるままに、
いいと思うことは
一緒にやってみたら。」
と、とてもシンプルなことを
言われたそうです。
お母様は、
“えっ、普通ってなんなんだろう?”
と思ったそうです。

それからは、
とにかく何を教えるにも
時間がかかり、
育児書に書かれていることに
全くあてはまらないので、
育児書はみないことに
したそうです。
“この子には、
この子のペースがあるんだから。“
と、考えるようになったそうです。
そして普通に育てるということが
どういうことか、
その言葉がスッと心に溶け込んで、
曇っていた霧が一気に晴れたような
気分になって、
彼なりの感覚や
世界が広がっていることに気づき、
彼が持つ世界をもっともっと
豊にしていこうと決心したそうです。

その後、
音楽が好きなのかなと
思わされる出来事があって、
“好きなことが何か一つでもあれば、
これから先、生きていく上での
自信につながるかもしれない“
と思い、
楽しむための
ピアノのレッスンを
お願いしたそうです。

お母様自身、
幼少時に厳しい
ピアノの先生について、
とても嫌な思いをして、
早々とやめてしまったので、
おこさんの先生には、
技術的なことよりも、
何か1曲でも弾けるようになれば
いいんですから、
とお願いしたそうです。

それからは、
学校の勉強はさて置き、
ピアノの練習は
率先してやったそうです。
と同時に、
水泳も好きになって
練習に励んだそうです。

そしてどんどん
ピアノにのめりこむようになって、
思いもしなかった、
プロの道に進むことに
なったそうです。

とにかくお母様は、
上手にできなくても
ほめてあげたそうです。
もともと英才教育をと
思ってもいなかったし、
この子がハンディを抱えて
生きていく上で、
“生きる希望や喜びを感じてほしい”
との思いからだったので、
とにかくほめてあげました。
と、おっしゃいました。

そして『伸行らしく』育てることを
第一に考えて、
彼がやりたいことに
ストップをかけず、
常に明るく、楽しく、
そして彼の可能性を信じて、
あきらめずに前に進むように
心がけたそうです。

最後に、
これからも、
人間が持つ可能性を信じて、
『明るく、楽しく、あきらめない』
毎日を送っていければと
締めくくられました。